[PHP-dev 676] Re: mbfl ライセンスに関して

sgk php-dev@php.gr.jp
Sun, 5 Jan 2003 05:37:37 +0900


お返事するのにすごーく時間がかかってしまって申し訳ありません。
私事でかなりばたばたしていまして、気持ちにも余裕が無いです。
でも、どうお返事していいもんだか、困っていたことは確かです。

ざっくばらんに言って、大変失礼ながら、
小泉さんの議論の構成がよくわからないんです。
目的は「ライセンスをBSDライクに変えてはどうか?」。
それはよくわかるのですが。

特に、
>mbfilter 自体の著作権が主張できない場合が想定される。
このへんがよくわからないです。

あと、細かいところで恐縮ですが、「…LGPL違反である」
ではなくて「…ライセンス違反である」ではないかと。
LGPLそれ自体は使用許諾契約ではないということを
ご理解いただいていますでしょうか?LGPLやGPLそれ自体は、
あがめたてまつるようなものじゃなくて、ただの例文集ですから。


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よくわかんないままでは議論が進みませんので、
こちらの状況を説明しておきます。
少しは疑問の答えになるかもしれません。

1)ハッピーサイズという会社が作ったソフトウェアがベースである。

私が在籍していたハッピーサイズっていう会社がありました。
この会社で漢字コード変換フィルタライブラリを作って、
自社で使っていました。ソースファイルのコメントに書いてありますが、
最初はC++で書いてあったのですが、PHP3への利用という話を
期として、Cに書き直しました。このあたりの作業は私がやった
ものですが、会社業務として行いましたので、会社の著作物です。

2)ハッピーサイズはこれを無償で一般に提供した。

一般にって言っても、PHPで使われた他はめだつところでは
使われていないようです。持って行った人は多数。

3)このソフトウェアは今でも提供されている。

ftp://happysize.com/opensource/happysize-kanji-0.3.tar.gz
当時からこのURLだったかどうかは定かじゃありません。
ソースを見ていただくとおわかりのとおり、あまり、
かっこよくはないです。

また、ソースに記載のメールアドレスに問い合わせても、
ソースをもらうことができます。URL教えられるだけですけど。

4)無償提供したのは、一定の希望を持ってである。

・自社のソフトウェアの実用性を確かめたい。
・世の中に少しは貢献したい。お返しがしたい。
・このソフトウェアが発展していくといいな。

5)ライセンス条項としてLGPLを選択した

最初はGPLでしたが、後にLGPLになりました。
GPLにしたのは、PHP3がGPLだったからです。変更の理由は、
上記の「希望」によれば、LGPLがより望ましいだろうとの考えです。

変更に際しては、すでにPHP3のために大きく機能拡張を行っていた
塚田さんの了承を得ています。

LGPLを選択したのは、自社で細かい条文を書けなかったことと、
当時他にテキトウな例文集がみつけられなかったからです。

6)当然ながら、ハッピーサイズの著作権は拡張部分には及ばない。

ハッピーサイズの使用許諾契約は、各々の変更者が変更部分に
ついてLGPLを適用することを条件に変更と再配布を許しています。
当然ですが、ハッピーサイズの諸権利やコントロールは、
拡張部分には及びません。

もしもライセンス内容を変更するとしたら、拡張部分については
それぞれの著作者(主に塚田さん)の了承を得る必要があります。

7)著作権の所有者は、現在変更されている。

ハッピーサイズ社の事情により、著作権はアクセンス・テクノロジー
という会社に売却されました。現在、私は、こちらの会社に所属
しています。アクセンス・テクノロジーとしては、継続して
無償提供する意向ですが、特に新しい版を作ったわけでもないので、
アクセンス・テクノロジーとしての配布は開始していません。
それまでの間、(3)のURLは存在できることになっています。

幸い、当初の使用許諾契約は、著作権者からの一方的な契約破棄を
認めていません。過去に提供され使用されているソフトウェアが
急に使用できなくなることはありませんし、権利表示を変更する
ことは強制されません。

ただし、もしもライセンスの内容を変更するとしたら、
ハッピーサイズにはすでにその権限はありませんので、
アクセンス・テクノロジーが新たにライセンスすることになります。


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この先は私見です。アクセンス・テクノロジーや
ハッピーサイズとしての正式な見解ではありません。

ライブラリとしての独立性云々の話について。PHP3の最終版まで
について言えば、ライブラリとしての独立性は保たれていたと
考えます。.aファイルを作るようにはなっていませんが、
.aがライブラリの必要要件というわけではないですよね。

入手先も、間接的ではあるけれど記載され続けていました。
だから、使用許諾契約に違反した状態ではなかったと考えます。

>あくまで LGPL の適用されたライブラリであると主張する必要が
>あるならば mbfilter の原型をどこかで入手できなくてはならないし、

うーん。小泉さんの議論のこの辺に違和感を感じるんですよ。
LGPLはその適格性を問うものではなくて、
単に被許諾者が守るべき条項ですよね。
もしもLGPLの条項への違反が疑わしい状況があっても、
単に著作権者がおめこぼしをしているだけであって、
LGPLを主張できないとか、著作権を主張できないとかって
ことはあり得ません。
私、なにか読み違えてます?

だから、最初の繰り返しになりますが、

>a. mbfilter の再配布や利用に関する条項が無効である。
>   したがって、php のパッケージに組み込むことに問題は存在しないが、
>   mbfilter 自体の著作権が主張できない場合が想定される。

これが何を言ってるのか、混乱しています。
まさか、著作者の著作権の成立を疑問視してるのではないですよね?
???


個人的にはBSDライクなライセンスでもいいんじゃないかなって
思っています。ベースの部分よりも、その後に主に塚田さんによって
機能拡張された部分がむしろ重要になっていますしね。
今さら元の小さな部分の権利やらなんやらに固執するのも
かっこ悪いですしね。GNUもGPLも好きではありませんし。

しかし、私の所有物じゃなくて会社の物なので、
会社が判断することです。しかし、会社と交渉するにしても、

・使用許諾契約違反しているが、
・違反を回避するための作業が大変なので、
・現状追認して、
・契約内容を変更してくれ。

っていう議論じゃお話にならないです。
これまでのメールを見せたら、その後の交渉はあり得ないです。
私一人でやっている会社じゃないですから。


私が過去に作ったソフトウェアをPHPで使っていただけているのは、
とても嬉しく思っています。だからPHPの発展にとってそれが
不便ならそれを解消したいと思います。でも、今の状況だと
交渉にもならないので、できることなら以下のようなプロセスを
ふみたいと思っています。

1)まずはLGPLに適合していると思える状態にする。
少々大変かとは思いますが、なんとか当初の使用許諾契約に
違反していないと見える状態にする。つまり、ライブラリとして
他の人が比較的簡単に再利用できる状態にする。

その上で、

2)ライセンス内容を変更した方が今後の発展にはより良い、
 という交渉をする。

こういう形でなら、交渉の可能性があると思います。


会社の立場で考えると、無償提供であったとしても、
無償だからなおさらかもしれませんが、著作者としての存在が
埋没していくことを一番嫌います。一番望まれることは、
著作者名の表示が常に維持されることです。

この点で言えば、小さなソフトウェアかもしれませんが、
PHPチームないしZendにcontributeしたり、「PHP License」
そのものを適用したりってことは、ほぼあり得ないことです。

少し余談です。LGPLでは、バイナリ配布のときは著作権表示を
行わなくてはならない決まりです(BSDなどでも同じですよね)
が、僕らのソフトウェアについては守ってもらったためしが
ないです。よく、LinuxとApacheとPHPを組み込んだルータとか
ありますが、ハッピーサイズや当時の「日本語化チーム」の
名前を見ることはありません。どういうことなんでしょうね。
LGPLなりなんなりの厳密性は、そこまで問わないだろうって
ことなのかなあ。うちの会社は今のところ、あまりめくじら
立てるつもりはありませんが。



長々とすみません。

sgk
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... hope this helps.