[PHP-dev 808]Re: mbfilter/mbregexのライセンス問題について

Ko Kazaana kaza @ kk.iij4u.or.jp
2003年 6月 21日 (土) 22:16:41 JST


 こんにちは。風穴です。
 できるだけ答えてみました。


= On Sat, Jun 21, 2003 at 05:49:15PM +0900,
= Moriyoshi Koizumi-san wrote:
(snip)
> つまり、ライセンスそのものの変更というよりは、ライセンス形態の変更も可能だ
> ということですね。

 えっと、この直前に書いた廣川さんのメールに対する返答でも書いたのですが、
「ライセンス」も変更できます。
 契約というのはpeer to peerなものであり、権利保有者は、それぞれの契約者
ごとに、まったく別々の契約を結ぶことさえ可能です。普通は面倒なので、そん
なことはしませんが。


(snip)
> その提案において注意した点は、現在 PHP と共にバンドルされて配布されている 
> mbfilter が、元の形態とかなり異なっており、さまざまな PHP 開発者による修正
> や機能拡張が行なわれているというところです。
> 
> つまり、現状では、どこまでが PHP のパッケージで、どこまでが mbfilter のパ
> ッケージなのか、スコープがあいまいなままになっているということです。
> 
> 私はこの問題を個人的にコミットされた方に問い合わせてみましたが、自分たちは 
> PHP に貢献したつもりで、そのライブラリ単体について貢献したつもりはなかった、
> とおっしゃっていました。
> 
> その方々の考えの是非は別としても、私はそのスコープがはっきりさえすれば、ラ
> イセンスの問題が、あるとすれば、それは解消できるものと思っていました。これ
> が当初からの考えです。だから、そもそもライセンス変更にこだわっているわけで
> はありませんでしたが、正式にお願いするとすれば、ライセンス変更という形でま
> ずは検討いただきたいというのが、私のスタンスです。
(snip)

 現状のPHPに含まれれている、アクセンス・テクノロジー社の著作物について
の問題には、残念ながら、私はよく状況を理解していないので、まったくno
ideaです。

 しかし、今後、そうしたライセンス問題をすっきりさせるためにはどうしたら
いいか、ということについては、すでに述べたような提案というか、参考意見を述
べているだけです。


 で、先の廣川さんのメールへの返答にも書きましたが、私が書いたような方法
をとれば、「どこまでがPHPのパッケージで、どこまでがmbfilterのパッケージ
なのか」ということを、区別しなくてもよいという状態にできる可能性がありま
す。その意味で「PHP開発者にとっても分かりやすい」状態にすることができる
のではないかと考えています。



> >  もちろん、ここで「GPL」や「LGPL」にこだわる必要はありません。公衆に対
> > する一般的なライセンスとする場合には、GPLやLGPLのような広く知られている
> > (といっても、理解されているとは限りませんが ;-))ものを雛型として利用す
> > れば、利用する方も分かりやすい、という利点がありますが、Aさんとアクセン
> > ス・テクノロジー社との間では、そういう点は考慮する必要はありませんので。
> 
> 別にオープンソースのプロダクトには OSI 認定のライセンスを用いる必要がある
> という決まりもありませんし、ライセンス形態は自由であって構わないと思いま
> す。そこで、異なるプロジェクト同士で個別の契約を結ぶというものも、風穴さん
> のおっしゃる通り、選択肢に含まれるかと存じます。各国の国内法においての効力
> は不明ですが、デュアルライセンスという形態もありますし。しかし、私の知る限
> りでは、今回のケースはやや特殊なものと感じられますが、過去にそういった事例
> があるとしたら、非常に興味深いです。もしありましたら、ポインタを示していた
> だけると幸いです。

 法的な問題を扱う場合、まず真っ先に問題になるのが準拠法をどうするか(つ
まり、どこの国の法律によって判断するか)です。しかし、現状、インターネッ
トを介して生じた問題について、その準拠法をどうするべきかということについ
ては、法律家(法律研究者や弁護士など)の間でも明確な判断基準や合意はまだ
ないそうです。それが分からない以上、効力等についても確かなことは何も言え
ない、というのは、まぁその通りです。

 しかし、「デュアルライセンス」という方法は、「著作権者は、著作物に対し
て、著作権法に定められた権利を行使できる」という、極めて基本的な事実によっ
て成り立つものです。従って、この方法が有効かどうかということであれば、こ
れは、ほぼどの国でも(まともな著作権法がある国なら)認められると言ってい
いと思います。「ライセンスは必ず 1種類でなければならない」という制限を加
えている国があるとは聞いたことがありませんし、そうすることに意味があると
は思えませんし。

 ちなみに、日本の著作権法にも、デュアルライセンスを否定するような制限は
ありません。

 というか、契約(著作権者が有する権利を許諾する契約)は、あくまでも
「peer to peer」に行われるものだということを理解すれば、デュアルだろうが、
トリプルだろうが、何種類もの方法でライセンスされることに違和感を感じるこ
とはないと思うのですが……。権利を有する者は、その権利を行使したり、許諾
したりすることができるのですから。


> >  ライセンス(今回の議論では「利用許諾契約」)というのは、当事者間の合意
> > であればよく、特に、その当事者間でそれを巡って争いとなる可能性が極めて低
> > ければ、文面も、特に難しく考える必要はありません。法律上は(少なくとも日
> > 本国内法上は)、口約束でも契約は成立します。
> 
> ライセンスと一口に言っても、パッケージを配布する立場にいる当事者同士の契約
> という側面もありますが、利用する側と、パッケージ配布者の間の「約款」という
> 側面もあります。その点をクリアにしなければ、安易にライセンス形態を変更する
> ことは、望ましくない結果を生む懸念があることを指摘したつもりでしたが、その
> 点は考慮する必要がないのでしょうか?

 「望ましくない結果を生む懸念」といのがよく分かりません。どういう場合を
考えていますか?

 必要以上に難しく考えることはありません。「権利者」が「権利を許諾」する
のが(ここで言っている)契約であって、「側面」がいくつもあるというような
ものではないのですが……(あるいは言葉の問題でしょうか?)。ですから、
「ライセンス」と「約款」などと、区別して言う必要はないはずです。

 「ライセンス」という言葉が気になるのでしたら、すべて「契約」という言い
方にしても構いません。

 「権利者」と「権利者が有する権利」、「権利を許諾される者」、「許諾され
る権利」を明確にして、全体の契約の構図を、自分で絵に書いてみると理解しや
すいと思います。



> >  GPLやLGPLというのは、まさにsgkさんが指摘されていたように、フリーソフト
> > ウェアライセンスの「便利な雛型」であって「法律」ではありません。なので、
> > 「GPL違反」とか「LGPL違反」という言い方は正しくありませんし、議論の混乱
> > の元にもなりかねません。
> 
> ここは、ずっと誤解されていると感じる点の一つなのですが、GPL や LGPL に違反
> しているとの指摘の意味は、PHP のパッケージを配布する側が契約に違反している
> 可能性があるということです。

 ですから、それを「GPL違反」とか「LGPL違反」と言うのは間違っている、と
いうことです。どういう文脈であれ、「GPL違反」、「LGPL違反」という言い方
は間違いだし、混乱のもとです。どういうことを言いたいのであれ、まずは正し
い言い方をしたほうが良いです。字面から意味まで取り違えてしまうこともあり
ますので。


> アクセンス・テクノロジーはじめ、mbfilter のパ
> ッケージ配布者の方は、この議論の前に、LGPL 以外の契約形態を提示されていま
> せんでしたから、もし、PHP での利用形態を見て、他のプロジェクトにおいて、
> mbfilter を完全にパッケージに統合し、他の契約文書によってそれを配布するこ
> とには問題がないと判断された場合において、後で、著作権者が権利を主張するこ
> とができるのかというと、著作権者の意向とはいえ、できない場合もあるのではな
> いでしょうか?私にはその判断はしかねますが、著作権者の文書化されていない意
> 向を、すべてのパッケージの配布者と利用者に伝達することが事実上無理な以上、
> その約款が利用条件のすべてである、とパッケージの配布者と利用者が判断するこ
> とは無理がないと思います。

 これは明確に「No」です。
 例えば、書店で売られている書籍では、ほとんどの場合、複製や公衆送信権等
について禁止する旨は明記されていませんが、だからといって、それができると
解釈することはできない、ということは皆さんよく分かっていると思います。

 著作物の、著作権法によって許諾されている権利については、著作権者からの
「許諾」が必要です。ですから「明記されていない」ものは、あくまでも「(著
作権者の意向が)分からない」ということであって、「それが利用条件のすべて」
であると解釈することはできません。



 それから「後で著作権者が権利を主張できる」というのが、どういうことを想
定して言っているのか、ちょっと分かりませんでした。補足して頂けますか?

 権利者はいつでも権利を主張できますし、契約はあくまでも契約ですので、そ
の契約の内容を変更したり、破棄したりということが「できない」ということは
ありません。



> これをこの議論にもってくるのは不適かとは思いますが、
> 日本国の著作権法第二十条では、著作権者の同一性保持権について、
> 「特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機
> において利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機におい
> てより効果的に利用し得るようにするために必要な改変」が加えられることについ
> ては、適用を受けないと述べられています。

 「著作権者の意が及ばないことがある」という意味で引用されたのだと思いま
すが、同一性保持権という点では確かにそうです。では、上で小泉さんが「著作
権者の意向とはいえ、できない場合もあるのではないか」としている場合につい
て、そういうことが断言できる根拠となる条文が、著作権法にあるかどうかを探
してみてはどうでしょう(「……場合もあるのではないでしょうか?」と推測す
るだけでなく)。
 上に書いたように、私には小泉さんがどういうことを想定しているのか分から
ないので、何とも言えませんが……。



> それに、 LGPL で記載されている条文は、必ずしも著作権を保護するための条文で
> なく、もっと一般的な契約条項を含んでいますので、その点で、私は現状と、その
> 条文に書かれている内容が「矛盾」すると言ったまでです。権利が有効にならない
> おそれはあるとは言いましたが、著作権が無効になるとまでは述べたつもりはあり
> ません。

 うーん、「必ずしも著作権を保護するための条文ではなく、一般的な条項も含
んでいる」とおしゃる意味がよく分かりません。「著作権保護」とか「一般的な
契約条項」とか、何のことを言おうとしているのでしょうか?

 そんなに難しく考える必要はなく、単なる「契約」です。権利を持っている人
が、その権利をどういう条件の下に許諾するのかどうか、それを記述しているだ
けなのですが……。著作者の権利は、そういう契約とは別に、著作権法という法
律によって「保護」されています。つまり、契約(ライセンス)がなくても、著
作者の権利は「保護」されます。


 あと、「現状と、その条文に書かれている内容が『矛盾』する」ともあります
が、「矛盾」するということは実はありえません。契約は「条文に書かれている
内容」が基本ですので、それと異なることがあるとすれば、それは「契約違反」
ということになります。それは「矛盾」という言い方をする状態とはちょっと違
うと思います。


 ともかく、小泉さんがどういう風に理解されているのか、何を言おうとされて
いるのか、ちょっとよく分かりません。すみません。_o_

-- 
Ko Kazaana / editor-in-chief of "TechStyle" ( http://techstyle.jp/ )
GnuPG Fingerprint = 1A50 B204 46BD EE22 2E8C  903F F2EB CEA7 4BCF 808F


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